最初見た時「奪」の簡体字(夺)?と思ったが^_^; 昔からある字らしい。ただし…
新しい言葉が生まれると、広告のコピーや雑誌にいち早く取り入れられる。これは国を問わない現象のようだ。もちろん僕は日本に住んでいるので、外国のメディアにそうそう目を通せるわけじゃないが、インターネットの「バナー広告」の一言フレーズなんかにも、新しそうな言葉をちょこちょこ見つけたりする。 で、最近台湾のサイトで見つけたのがこういうフレーズ。 用最短時間學會 最夯的網頁設計 意味はおおよそ、---最短の時間で、最も「夯」なホームページデザイン技術を会得しよう---といったところだが、「夯」って一体なんだろう。一見すごく略字っぽいので、台湾で勝手につくった方言字の類か?と思ったら、ちゃあんと中日辞典にも日本の漢和辞典にも載っている。こうやってPC上に表記もできる。ただし、その意味はかなり専門的な、狭〜い分野の言葉だった。 《中日大辞典(大修館書店)》 【夯(䂫)】 A)hang1 ①=[撞锤]地固めに用いる道具(つち、地突き棒、石塊など)。胴突き。 ②(土木建築、畑などの)地を突いて固める(こと)。地固めする(こと) ③堤防などの地固め工事。 ④[方](力を込めて)打つ。なぐる。 ⑤[方]肩で担ぐ:〔扛kang2〕に同じ。 B)ben4〔夯〕 [古白]ばかでかい。大きくてのろい:〔笨〕に同じ。→〔夯汉〕 《漢字源(学研)》 夯 大部5画 [音]コウ(カウ)[漢]、コウ[呉] [意味] ①{名}土を固めること。地づき。また、堤防を固める工事。「打夯歌(ダコウカ)(地突き歌)」。 ②{動}力を入れて物を持ち上げる。「担夯(タンコウ)」 [解字]会意。「大+力」で、大いに力むことを示す。 (←ほんまかいな) だそうだ。 試しに中国大陸の方の百度で検索すると、「强夯工程量计算」「主要产品/夯机系列」「地基处理--强夯法」など、土木関係と思しきサイトが多くヒットする。関連業界の関係者及び一部の翻訳業の方ならなじみのある字かもしれないが、フツーの日本人が知らなくても不思議はない…よな(言い訳)。 (ちなみに、よく分からない漢字が並んだサイトも出てくるが、多くは韓国のサイトの文字化けらしい。どうやら「夯」は文字コード上、韓国語の「본(pon)」という字に対応しており、「본부(本部)」という語にヒットしているようだ) だが、今回の「夯」がそんな意味でないことは一目瞭然だ。ネット検索でもおおまかな意味はわかるが、正確なところまでつかむのは難しい。やっぱり知ってそうな人に聞いてみよう、というわけで、今回は台湾の網友Tessにメールを出して聞いてみた。ライターや翻訳の仕事をしている彼女は、言葉について並々ならぬこだわりがある。 結論を言えば、「大人気」「流行中」「大ヒット」、その辺を意味する言葉だそうだ。 さらに、この字が登場したのはごく最近のことらしい。彼女の印象では、ここ一、二年のうちに広まり始めた語彙で、しかも今年初めあたりまでは、漢字ではなく「ㄏㄤ」という注音符号で書かれることが多かったという。 注音符号とは現在台湾だけで通用する発音表記文字(wikipediaの説明)で、子音文字と母音文字をローマ字のように交互に並べて綴る(ㄏはh、ㄤはangを表す)。台湾のブログでは結構お目にかかれる字だ。と言っても、文章を書くわけではなく、擬音語や擬態語、間投詞、それから漢字を当てられない台湾語起源の言葉などを表記することが多いようだ。まあカタカナのような位置づけだろうか。 ということはつまり、夯(ㄏㄤ)も台湾語由来か、と推測もできるが、Tessの言う所では、出所はよくわからないそうだ。ただ、出始めの言葉だけに、台湾人自身「?」と思っている人も多く、Yahoo!知恵袋の台湾版に当たる「Yahoo!奇摩知識」にも質問がいくつか出ている。その一つを紹介してくれた。見るとどれもが個人の推測による回答のようで信頼性には疑問符がつくが、なるほどと思える部分もあるので紹介する。 【説1】もともとは「烘」という字だった。この字の台湾語読みが「hang」であり、「夯」の中国語読みと発音が同じのため、混用されるようになった。 ※烘は北京語だと「火であぶる、乾かす」という意味が基本だが、大修館書店「中日大辞典」によれば、「熱烘烘」という言葉には「勢いが盛ん」という意味もあるらしい。 【説2】人気が高いことを中国語で「紅(hong2)」という。これは台湾でも通用する意味のようだが、この字を台湾語では「ang」と発音する。その2つの読みが混在し、中国語読みの子音「h」と台湾語読みの母音「ang」がくっついて「hang」となった… ※うーむ、複雑。だが、何やら漢字字典の元祖「説文解字」の発音表記法「反切」のようで面白い。 【説3】英語の「hot」がなまったもの。 ※えー?わかりやすいが、つまらん説だなXD というわけで、今回はいまいち結論が出ず歯切れが悪いが、もしかしたらこの言葉も、そのうち大陸方面に輸入されて流行り始めないとも限らない。そうなれば僕は、新しい言葉が育つ過程に立ち会ったということになる。Googleで見た限りでは、日本でこの語に触れたサイトは見当たらなかった。ちょっと楽しみだ。へへ。
by uedadaj
| 2007-09-07 21:26
| 語
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