醬子 釀子 粉

こうして並べてみると何やらお料理教室のようだが。



僕の中文ブログにコメントをくれる台湾の網友の中に、「醬子」という言葉を使う人が何人かいる。最初は打ち間違いかと思ったが、人によっては毎回この言葉が出てくる。「ミソがどうした」と思うものの、無視しても内容はまあ分かるので最初は読み飛ばしていた(コメントくれた方すみませんXD)。

でも、いくつか読んでいるうちに大体この言葉がつきそうな場所がわかってくる。

一つは、形容詞の前だ。
 她的反應會醬子
 一定要殘業到醬子晚嗎?

さらに、動詞の前。
 我是醬子想的
 醬子夠執著了吧

それから、名詞を修飾するような使い方も。
 有時候還挺討厭醬子的變化呢

これで確信が持てた。つまり「這樣子」(这样子)のつづまった形。「では」が「じゃあ」になるようなものだ。「子」は要らないような気もするが、リズムを整えるとか、見た目の混乱を避ける意味合いがあるんだろう。ちょっと調べると、「那樣子」も「釀子」と書かれる場合があることがわかった。こちらの方はそれほど見かける頻度が高くないが、「醬子,釀子」なんていう面白い名前のサイトがあったりする。

大陸の検索サイトbaidu.comで検索してみても「酱子」は結構出てきたが、「这样子」の意味のほかに、固有名詞ではないかと思われる使い方も少々出てきた。何でも、木子美という中国の有名なブロガーが、以前「酱子」というハンドルネームを使っていたとか。これが今回の「醬子」と同じなのかどうかは知らないが、印象から言えば、これもやはり台湾から広がった表記のように思える。

以前触れたことがあるが、北京語に特徴的な「sh」「zh」「ch」などの巻舌音が、台湾語には存在せず、「x」「j」「q」のような発音になったりするようだ。実際に「這」という字も台湾語では「jit」「je」みたいになるらしい。その影響を受けて、台湾で使われる北京語(台湾国語)でも「zh」「sh」などの音が「j」「x」に近くなり、「這樣」だと「ji-yang」→「jiang」みたいな感じになるのではないか。ついでに北京語の「醬」と「釀」は第四声で、「這」「那」と付合する。

さらに、「醬子」を使う人は「很」を「粉」と書くことが多いようだ。これもしばらく確信が持てなかったが、「我喜歡」というフレーズでわかった。実は台湾語には「f」の音もないらしい。「風」は「hong」になり、「粉」は「hun」になる(アクセント記号は省略)。

大陸方面のニュースサイトなどで、これらの表記を「酱子语文」と言って憂えるような論調で語るものをいくつか見かけた(例)。曰く、ブログから生まれたこれらの表記が多くの人を悩ませている。このままでは中国語が「酱子语文」になってしまうのではないだろうか?云々、という感じ。

今や各国共通の悩みのようだ。現在、インターネット上では、言葉の表記の規制をほとんど受けない。企業や官公庁などのHPでさえ変な表記をたくさん見かける始末だ。ましてや個人レベルなら、面白い書き方はみんながマネをする。危機感を覚える気持ちもわかるが、これは「相手に応じて書き方を変える」というごく常識的な対応をみんなで身につけるしかないだろう。

そんなことより僕が気になるのは、「醬子」「粉喜歡」式の表記が本当にネット以前には存在しなかったのか?ということだ。意外と台湾の中学校や高校あたりでは、「我是醬子想的」「喜歡他〜」みたいなメモが、以前から教室内を飛び交っていたのでは?という想像もできるんだが…
[PR]
by uedadaj | 2007-03-02 19:33 |


<< 殘雪《黃泥街》 電気と文芸 >>