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今年过年不收礼,收礼只收脑白金

たぶん、おおかたの中国人と中国在住の外国人は、このフレーズを知っているんじゃないだろうか。



うちはスカパー!のCCTV大富を入れており、最近よく中央電視台のニュースを見たりする。と言っても内容は半分も聞き取れないので軽く流し、合間に流れるCMにちょっと耳を傾ける。仕事柄ということもあるが、言葉を覚えるのにもいいような気がしたのだ。何しろ短いから負担が少ないし、同じフレーズが毎日(へたすると1日何度も)流れるので覚えやすい。しかも字幕付のことも少なくない。これはいいテキストだと思い、最近CMだけは、やや気を入れてヒヤリングしたりしていた。…の だ が。

CCTVで、ここ数カ月ほどずーっと流れていて、頭に染みついてしまったのが、高齢者向けドリンク剤「脑白金(脳白金)」のCMである。CG製のおじいさん、おばあさんの人形がピョコピョコ跳ね踊るのに合わせて、標題の文句が

♪今〜年〜过〜年〜不〜收〜礼〜 
 收〜礼〜只〜收〜脑〜白〜金〜
 脑 ・ 白 ・ 金! 

てな感じで歌われる。

このCMは、中国の年越し(过年、過年)の習慣に由来するようだ。旧正月の帰省時期に、両親への贈り物をどっさり買っていくのが慣わしで、最近は健康食品、中でもこの「脳白金」や「黄金搭档」というドリンク剤が人気を博していることが背景にあるらしい。(参考)

秋からずーっと流してんのも気が早いというか、商売熱心だが(コピー変えりゃいいのにね)、おかげさんで上記の文句はすっかり頭にインプットされた。

ところがこの間、中文ブログに来た中国人のお客さんが教えてくれたところでは、このコピーは文法的、論理的に意味の通らない「病句」だというのだ。いったいどんな風に意味が通らないのか。直訳してみるとわかりやすいかも知れない。

今年过年不收礼 (今年の年越しには贈り物はいりません)
收礼只收脑白金 (贈り物は脳白金だけもらいます)

つまり、前半の句で「贈り物はいらない」と言っておいて、後半では「もらいます」というのは論理的に矛盾してるじゃないか!ということらしい。

僕が最初にこのコピーを見たとき、確かに前後のつながりがややすんなり行かない感じはした。でもほら、中国語の場合、句と句の間のつながり適宜「だから」「だが」「そこで」などを補足しなさい、とかよく言うじゃないですか。その好例がこのコピーなのかな、と思っていたのだ。つまり、

今年の年越しには贈り物はいりません。
でも、どうしても贈り物をくれるというんなら、脳白金だけもらいます


という意味合いで通じるんだろうと、漠然と推測していたのだった。

なにぶん出稿量の多い広告だから一般への浸透度も高く、子供がマネしたりテレビ番組などにもパロディーが頻発しているとか。「これはいかん」と教育関係者が思ったのか、学校の試験に採り上げられ、「この文を正しく書き直しなさい」という問題になったりしたらしい。

ネットをのぞいてみても、中国版「教えてgoo!」みたいなサイトで「脳白金のコピーは間違いなのか」という質問が見られた。「間違いだ」という答えの中には、「正しくはこう書くべき」という例もいくつかあった。僕のブログのお客さんが教えてくれた例も含めてちょっと挙げてみると、

●今年过节不收其他的礼,只收脑白金。
●今年过节除了脑白金,其他礼物都不收
●收礼不收其他礼,要收只收脑白金

などというのがあるようだが、ううむ。七音×2のリズムが崩れたり、「脑白金」が途中に来て最後の「脑・白・金!」とリンクできなくなったり、「收」という言葉が多すぎて煩雑な上に「过节」が入らなくなるなど、コピーとして使えそうな文句ではない。わはは。難しいですね。

だが一方、「病句ではない」という反対意見もある。「舛互」という修辞法の一種であり、問題はないというものだ。そう言えば日本語の場合でも、「そこには誰もいなかった。」と断言しておいて、すかさず後に「…彼女を除いては。」などと続ける手法が、文の印象度を増す効果としてよく見られる。

今年の年越しは贈り物はいらない。 …脳白金を除いては。 ということですかね。

僕はこの件について何も判断できないが(ネイティブの方や専門の方のご意見を伺いたいところです)、なんでも脑白金のCMはかつて「十大恶俗广告」のトップに選ばれたそうで、その他にも誇大広告をしたかどで一部の放送局で放送禁止、などという芳しからぬ記事もちらほら見かけた。だがそれでも、ターゲットへの深い理解に基づいたコンセプトの設定やメディアミックスの活用、およびイベントや公共福祉活動への積極的参与などが功を奏して、好調な売上に結びついているらしい(何だかここだけ企画書風^_^;)。近年の中国の勢いが垣間見えるような話だが、一方で当然いろんな突き上げも起こってくる。その一つがこのコピー問題なのかも知れない。

ともあれ、この手の言葉の問題に最終的な結論は出ないのだろう。最初は「ヘンだ」と批判されても、そのうち誰も気にしなくなって定着していった言い回しは、日本語や他の言葉にもたくさんあるはずだし、そもそもその積み重ねが言葉の歴史というものだ(広告やメディアという一部の力によって、意味や使い方が変動するという状況は問題ありと思うが)。だが学習者としてはやはり少し困る。中国のテレビで流れているからって、CMの言葉を鵜呑みにしていたら、もしかすると間違いを覚えさせれられかねないわけだ。といって、綴りや字体の統一ならともかく、こんな細かい語法の問題まで規制するわけにもいかないし。

…と思ったら、中国政府もやはり「広告による言葉の乱れ」を気にしているようで、今夏から諺や四字熟語をもじったコピーは規制の対象にしたというニュースを見つけた。
おやおや。この規制はコピーライターにとってイタイわ。同業者として同情を禁じ得ない。

そう言えば、日本でも昔から言葉の乱れが嘆かれており、ここ数年またブームになっているが、以前はよくやり玉にあがっていた「広告コピーによる言葉の乱れ」が、最近の論調にはあまり見られない。広告が多すぎてみんな慣れてしまったのか、それとも他にも「凶悪犯」がたくさん出てきて、いろんな方面を叩くのに忙しいのかね。
by uedadaj | 2006-12-13 12:48 |


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