実物大

「実物」って、どこからどこまでが「実物」なんだろう。



子供が生まれてから、急に頻繁に行くようになったのが、おもちゃ売場だ。何年も前の話になるが、子供に買ってやるものを探しに、あるデパートのおもちゃ売場に夫婦で足を運んだ。何を買ってやるつもりだったのかは覚えていない。その代わり、妙に記憶に残ったことがある。

目的の場所へ向かう途中で通りがかった、ポケモン売場。そのまん中へんにディスプレイされていた、ピカチュウの結構大きなぬいぐるみ。その足元に、大きめの手書きの値札。

ピカチュウ
実物大
1,980円


「じつぶつ??」僕と家内は顔を見合わせて目を丸くした。…いや、言いたいことはわかります。テレビの中で、主人公のサトシくん(だよな、確か)などの人間どもと比較した上での、設定上の大きさに近いよ、という意味でしょ。ポケモンに慣れ親しんだ子供たちにもこれで充分通じるだろう。だが、その世界の外にいる我々は、デパートの店員さんがどんなつもりで「実物」と書いたのか、正式なカタログにもそう書いてあるのか、等々のことに思いが行ってしまい、微妙な笑いをにじみ出さざるを得なかった。

そう言えば僕の甥も小学生の頃ポケモンに相当はまっていたようだが、似たようなエピソードがある。彼の妹が飛行機で旅行することになった。その時乗ることになったのが、ANAのポケモンジェット。当時、甥は小学5年くらいだったか、まあポケモンは卒業しかけだったと思うが、家内がそんな彼をからかって「実は羨ましいんでしょ」と水を向けた。それに対する彼の答えがまた微妙。

「そんなの羨ましくもなんともないよ。本物が来るっていうんなら別だけど

ほほ。何だかわかっているような、いないような。当時の彼は、まだフィクションと現実の境界線上をウロウロしていたようだ。

その辺のことがしばらくウチで(というより僕ら夫婦の間で)定番ギャグになっていたが、ある時、関西に行っている友人が久しぶりに東京に戻ってきたので、一緒に食事をした。彼も子持ちで、しかも昔からアニメ系には詳しいヤツなので、さきほどの「実物大」の話をしてみた。だが反応はこちらの期待したような苦笑ではなく、普通の流れでこう言った。
「ああ。ピカチュウは体長40cmという設定になってるからね」
あ〜、そうなんですか。知りませんでした。でもオレらが言いたいのはそういうことぢゃなくてですね…。まあ仕方がない。この手の話は笑ってもらえなければそれまでである。

別に、フィクションの中の物を「実物」と呼ぶのはおかしいとか、んなカタイことを言いたいわけではない。じゃあどう呼ぶんだよ、と言われるとそれもなかなか難しいし。ただ、ここで「実物」という単語を使うことに抵抗を感じるかどうか。によって、その人の頭の中のある部分の風景がほの見える気が、しなくもない。

ところで、こんな細かいことを思い出して書く気になったのは、近ごろニュース番組で耳にした、あるトピックのせいだ。小さなニュースなので、今検索しても見つからなかったんだが…

オランダで、ノアの方舟の「実物1/5モデル」「再現」したという。

そうか。そう言えば、ポケモンなんかより余程「権威ある」フィクションが、大昔からちゃんと存在していた(私個人はフィクションだと思っているんですが^_^;;;)。現地及びいろんな国のニュースでは、この「実物」をどんな風に表現しているのだろう。キリスト教世界の内部にいる人々は、やはり「実物」といってのけることに違和感がないんだろうか。
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by uedadaj | 2006-05-11 19:43 |


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