(台湾《2535雜誌》2010年6月号掲載--掲載文は繁体中文)
<テーマ:エコ> エコな未来、の一例 十何年も前、家内がOLをやっていた頃、同僚の女の子が、上司のやまない貧乏揺すりを見ながら言ったそうだ。「...あの運動を発電に使えたらいいよねえ」 その冗談が、今やまじめに実現されかねない時代となった。 聞けば上海万博の日本館には、人が踏む圧力によって電気を起こす「発電床」を展示しているという。数年前にあれが公開された時は、国内でも随分評判になったものだ。その後、石油価格が高騰してエネルギー問題が深刻視された頃、歩く運動を電気エネルギーに変換して、携帯電話を充電できる器具などが 一躍脚光を浴びた。 人力発電は、日本の国民性にとても良く合った発電方法じゃないかと思う。まず資源を消費しない。それから太陽電池のように場所をとら ず、どこへでも移動して電気がつくれる。それに運動になるから健康によい。そして、有害な廃棄物やゴミを出さず「クリーン」だ。実のところ、政府や電力会社は原子力発電の普及を目指しているようだが、核エネルギーの恐ろしさを目の当たりにした日本人としては、感情的になかなか受け付けない。 だから、もし人力発電がかなり小型化され、しかも数時間の発電で家庭一軒くらいの電気をまかなえる程度にまで効率が上がったら、太陽電池の人気をしのぐかも知れない。 太陽光発電の売り文句に「余剰電力を電力会社に売って、家計が助かる」と言うのがあるが、悪天候が続くと当然発電量は低い。天任せのエネルギーだ。だが人力発電機は、自分ががんばった量が忠実に発電量に反映される。二倍体を動かせば、二倍エネルギーができるのだ。努力次第で安定収入が確保できる。 しかも、普通の仕事と違って、必要なのは体を動かすだけだ。会社員のように自分の商品を売るために人を説得したり、言いたくもないお追従を言ったり、クレームに対応したり、農業のように作物を毎日見回り、病気の世話をする事もない。 ただ、効率の良い人力発電装置は、おそらくかなり値が張るはずだ。そりゃそうだろう、微細な運動もエネルギーに変えるために機構は精密を極め、超伝導のような技術が必要になるかもしれない。だが、クリーンの極みである人力電力を欲しがる企業は多いはず。そこで、多数の人力発電機と発電員を管理し、 大量の電力を一括して企業に販売するブローカーが新たな職種として現れる。 彼らが発電員をリクルートする際の売り文句は「特別なスキルは不要、人と関わらなくても金が稼げる」...こんな職業に魅力を感じる人は今どき少なくないだろう。新たな職種として定着するかもしれない。 もちろん、いくつかの企業と契約して好きなところを散歩しつつマイペースでかせぐ「フリーの発電業」も出るだろう。だが一方で、だが多くの発電人はたぶん一つの電力会社の専属となる。より効率よく発電するための体の動かし方が開発され、その動きに専念するために、たとえば企業の屋上とか地下など「気の散らない」場所で、延々とからだを動かすだけという労働形態が出現する。彼らはいつしか「農奴」ならぬ「電奴」と呼ばれ、日本社会を支える柱の一つとなり... なんつって、「エコ」と「効率」を好む日本人の場合、こういう未来もあり得るかも知れない。 (中文版は こちら )
by uedadaj
| 2010-10-04 18:41
| 散歩
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