低調

別に「最近つまんなくて」とか「体調が悪くて」と言う話ではなく。XD



東京碎片で、TOPVALUや無印、ユニクロなどの服について触れたところ、常連さんのコメントに出てきたのがこの言葉だった。

【引用】
…在德國住的時候,我喜歡簡單+低調,已經討厭被當作稀有的亞洲人瞧了,所以服裝不能太怪…
(大意:…ドイツに住んでいた頃はシンプルで「低調」(な服)を好んで着た。ただでさえアジア人は珍しく、好奇の目で見られるのがイヤだから、服装もあまり変に見えないものを…)というような意味でしょう。たぶん。

この言葉、前にどっかで見たぞ?と思ったら、北京語通訳者の銭衝さんが紹介していた。基本的には「控えめ」という意味だが、最近では「シブい」とか「クール」とか「涼やか」とか「ちょいとニヒル」とか、とにかく暑苦しさを感じさせない大人の雰囲気(太字引用)---というようなイメージも表すらしい。
(関係ないが、彼のブログに出ていた曲、白氏あたりならカラオケで歌ったことなど、あるのでわ?)

ほお、と感心しつつ拝読したもんだが、実際の使用例を見たのは初めてだ。なるほど。無印良品などのスッキリとプレーンなデザインはそれこそ「低調」と言い表せるのだろう。台湾の無印のサイトにも、ブランドを語る言葉として出てくる

だが、日本語の「低調」はまず良い意味では使われないので、日本語アタマのままで読むと少々戸惑うことになる。たとえば中国のニュースサイトで見つけた「中国女排的“低调”」という記事。パッと見、つい「中国女子バレーの成績が低迷している」と解釈してしまうが、記事の内容は「優勝した中国女子バレーチームが北京に凱旋した時、さして誇らしげな表情も見せず謙虚にインタビューにこたえた」とむしろ褒める内容である。

ここで改めて中国語の「低調」が気になった。というのは、「控え目」や「謙虚」という態度が、もともと中華圏で褒める対象だったとは考えがたいからだ(笑)。

手元の電子辞書[小学館日中辞典1992年版]には、
・低調である。控えめである。

としか載っていないので、さくらやへ行ったついでに店頭にディスプレイされている電子辞書キャノンG90を操作して、ざっと調べてみる。この機種はコンテンツが多い上に複数の辞書を横断検索できるので便利だ(じゃ買えよXD)。

[大修館 中日大辞典]
・低調。無気力である。

[講談社 中日辞典]
・柔らかい論調。
・沈んだ口調。

[大修館書店 中国語 新語ビジネス用語辞典]
・低姿勢。控えめ。
・落ち着きのある。地味な。

[現代中国語新語辞典]
・対応や性格が控え目。
・調和がとれていない。友好的でない。

ついでに極めつけの[角川書店 中国語大辞典]
・低い調子(何だそれは?)
・低調。高調に対し。(日語)
・おだやかな論調や元気のない論調。

「クール」「シブい」などの積極的なほめ言葉のニュアンスは、収録されていない。割と中立的な意味合いの説明に混じって、日本語の「低調」に近い意味も載っている。元々はそれほど褒められたニュアンスの言葉ではないと思えた。それに、最近の用例にも「調和がとれていない」「友好的でない」とネガティブな意味があるようだ。

つまり中国語の「低調」には、相反するニュアンスが同居し始めているということになる。

だとすればちょっと面白い。「低調」という一語の内部で、意味の勢力争いが起こりつつあるわけだ。当面は前後の文脈で判断、ということになるだろうが、「クール」と「地味」を同じ言葉で表現し続けるのも、ちょっと苦しい気がする。ゆくゆくは新しい言葉をつくるか、古い言葉を掘り起こして「意味の住み替え」が起こるかも知れない。その時、「低調」という言葉に残されるのはどちらの意味なのか。何年後のことかわからないが、興味深い。
[PR]
by uedadaj | 2006-11-08 12:12 |


<< 搶頭香 KUSO >>