糸言糸

盆休み、不覚にも気胸を煩い、ウェブログも随分長くそっちのけになってしまった。



8月12日土曜日。あるきっかけで左胸部に鈍い痛みを覚え、翌日になって息が苦しくなってきたので、近くの大きめの病院の救急受付へ行った。昔から僕は「気胸になりやすい体型だから気をつけなさい」と何度か言われていたので、コレがソレじゃないかと薄々思いつつ、レントゲン撮影をし、待合室でいくらか待って、担当医の診断を聞きに部屋へ入った。

デスクの上のパソコンモニターに映された胸部レントゲン写真。案の定気胸で、左肺が半分程度の大きさになっていた。先生の説明を聞きながらも、僕は呼吸が辛いので、イスの上で思わず前かがみになって両膝に肘をつく。当然顔も下がり、視線はデスクの引き出し辺りを泳ぐ。と、そこに貼られたネームシールに印刷されている注意事項が目に入った。

熱 性 痙 戀 に 注 意

「戀」は「恋」の旧字体。テプラっていうんでしたっけ、あれで一字ずつ変換したら、「攣」より前にこの字が出てきたんだろう。しかも「熱」という字も混じっているので、思春期のヤマイですかそれは?と思わずココロ突込みをしつつ、一瞬症状を忘れてニヤニヤ見てしまった。

この「糸言糸」の部分は、当用漢字では「亦」の形に省略され、たまに見かけるのは「痙攣」や「親鸞」くらいだから、「痙戀」と書いたところで読み違えようもなく、伝達機能上はまあ、問題ない。間違いに気づく患者も多かろうが、なにぶん救急センターだから、みんなそんな指摘をしている余裕はない。あの表記はおそらく、ずっとあのままだろう。ずっと後にまた確かめに行きたい気もするが、そのためにはまた急病にならないといけないわけで…。

ところでこの「攣」と「戀」、どうしてうっかり取り違えそうな似た形なんだろう。つまり、「糸言糸」の部分に、レンアイとケイレンに共通する意味があるはず。というわけで手元の電子辞書で検索してみると、「糸言糸」を含む字が11個見つかった。それぞれの字にある、「糸言糸」の部分の説明を見てみる。

〔みね。幾つも続く山々。〕
「もつれた糸が続いて、断ち切れないさま。乱と同じで、ずるずると続いて切れない意を含む。」

〔まがる。/弓をひきしぼる。〕
「糸がまがってもつれること。」

〔=恋〕
「絲+言(ことばでけじめをつける)からなり、もつれた糸にけじめをつけようとしても容易に分けられないこと。」
〔ひく/ずるずるとひっぱる/ひきつれる〕
「もつれた糸(=絲)を手と手で引っ張るさま。ずるずるともつれる意を含む。」

〔=変〕
「絲+言の会意文字で、乱れた糸を解こうとしても解けないさま。」

〔木の名/人の集まりのなごやかなさま〕
「もつれる」

〔=湾〕
「(彎と同じ)」

〔切り身、肉のかたまり〕
「言+絲の会意文字で、もつれる意を含む。」

〔=蛮 未開の民、未開の地方〕
「もつれる意」→「蛮」は、姿や生活が乱れもつれた、ヘビのような人種だそうな。すげえ失礼(笑)

〔天子の馬車のくびき/天子の乗り物、等〕
「つらなる意」

〔想像上の鳥の名、等〕
「つらなる意」→鳳凰につらなって現れるという鳥

ざっと見ると、「糸が絡んでいる」のはわかるが、「言」の意味がいまいちよくわからない。同じ辞書でありながら説明が微妙にズレるあたりもどうもしっくりしないが、ムリヤリまとめてみると、
何だか複雑なモノに絡まって引っ張られている状況が、レンアイとケイレンの共通イメージらしい。

だから、世の中にすっきり単純に割り切れる「恋」など、ないんです。なんちてXD
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by uedadaj | 2006-09-14 21:22 |


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