【2535】代代木的「勝利祈禱場」

(台湾《2535雜誌》2010年7月号掲載--掲載文は繁体中文)



<テーマ:ワールドカップ>
代々木競技場、もとい祈祷場

「スポ根」という言葉がある。「スポーツ」と「根性」をつなげて略したもので、「根性」とは苦しみに耐える強い精神力のことを言う。

日本人のスポーツは「根性」の二文字と切り離せない。実力で勝つよりも根性で勝つ方が、日本人の好みに合うからだ。実力で及ばない相手に根性で、という勝ち方が、最も日本人の気持ちを爽快にさせる。

それを改めて思わされたのが、代々木体育館の横に設けられた2010FIFAワールドカップPR&観戦施設の名前「革命の広場」だ。「革命」という言葉は、辞書には「被支配者が支配者の国権を」うんぬんという意味の他に「既成の制度や価値を根本的に変えること」などと説明されているが、その他に「ありえないことを実現する」という気分で使われることがある。僕自身はサッカーに疎く、日本チームの実力もよく知らないが、相当苦しい戦いが予測(期待?)されていることは、この名前でわかる。

では、日本人はなぜ楽勝より辛勝を好むのか。思うに、苦しい試合ほど応援する側も「根性」を発揮できるからだろう。「一心に勝利を祈る」という行為によって。

祈る、と言っても神仏に祈るわけではない。今やほとんどの日本人にそうした信仰の習慣は残っておらず、「祈る」という行動パターンだけが残っている。強いて言えば、 祈る対象は「自分」、さらに言うと「一心に勝利を願い続ける自分の根性に勝負の行方を託す」ということになるかもしれない。だから、自分の見ている試合で、相手のミスなんかで予想外の点が入ったりすると、自分たちの強い「祈り」の成せる業と解釈して気勢を挙げるのが、これまた日本人は大好きだ。

さて、大声で声援するのも一種の祈りだが、他にもいろいろある。たとえば先に挙げた「革命」とい う言葉も一種の呪文と言っていい。ちなみにこの広場には、現在最も人気のある日本史上の偉人「坂本龍馬」の巨大な像が、新興宗教の仏像みたいに聳えたって いる。彼はたぶんサッカーと何の関係もないが、彼の一生を追うドラマが今年放送され、旬であるとともに、日本が近代化するきっかけとなった一種の革命(明治維新)を起こした立役者であったからだろう。

さらに、広場の脇のパビリオンには奇妙な展示物がある。折り紙で作った大量の青いカラスだ。青色とカラスは日本チームのシンボルだが、「紙で折る」という部分は、日本の伝統的な祈りの形「千羽鶴」に由来する。鶴は長寿の象徴とされており、長寿や病気の平癒を祈ってたくさんの折り鶴を作り、病気の人に送るという風習がある。それに事寄せて、サポーターのプチ根性を証明するわけだ。(このカラスの折り方は結構難しく、「ちょっとした苦行」になりそうだ)

このように、選手とサポーターの根性を発揮する舞台は万全なのだが、どうも巷から感じる熱気が、今回は少ない気がしてならない。勝たない試合は応援しない合理的なヒトが増えたのか、それとも、何回も出場しながら結果がパッとしない日本チームに飽きたのか?

(中文版は こちら )


※この文章はW祭の予選が始まる直前に書いたので、「どうせ今回もダメだろう」という気分が漂っているが、フタを開けてみると日本チームは予想以上の善戦を見せて盛り上がり、「岡ちゃん、ごめんね」という流行語を生んだのは周知の通り。
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by uedadaj | 2010-12-16 12:57 | 散歩


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