いいです

イトーヨーカ堂で買い物をした。店員とのやりとりで気になったことがあるので書いておく。



買ったのは、ヨーカ堂が最近出した「ボディヒーター」というシャツだ。ユニクロの「ヒートテック」の後発商品で、前にヒートテックを試して結構温かかったので、こちらも試してみようと思った。10円安いし。

ヒートテックにそっくりのビニールパッケージに入ったシャツを1枚レジへ持って行き、支払いを済ませて品を受け取る時、レジで店員にこう聞かれた。

「袋にお入れしてもよろしいでしょうか?」
えっ、と僕はしばらく返答に詰まった。

普通は、「袋にお入れしますか?」と聞かれることが多い。それに対する答えは「いいです」でOK。4文字、リズムにすると2拍だ。せいぜい「あ、いいです」「いや、いいです」の5〜6文字、3拍で済む。

しかし「お入れしてもよろしいでしょうか」と許可を求められた場合、「いいです」と答えると、店員はこちらの意図に反して商品をレジ袋に入れてしまう。入れて欲しくない場合、どう答えるべきか。

「ダメです」と言うと、この場にそぐわない強さが出てしまう。
「入れないでください」だと、不要に長ったらしくなるので、やはり避ける意識が働く。
「いりません」と答えると、質問に対して意味不明になる。

僕がこの時選んだ返答は「いや、いいです」だった。とっさのことだったが、「いや」をちょっと強調したつもりだった。

だが店員は、「いいです」の方を優先したらしい。商品をヨーカ堂の袋に入れ、口をテープで軽く留めて僕に手渡した。

この時点で強硬に「いや、袋はいりません」と言い直す手もあるが、そうなると店員はさっき留めたテープをはがして商品を出さねばならず、この袋は確実に未使用のままゴミになる。それは却ってムダになるので、僕は黙って受け取った。

「いい」が、会話の流れ次第で承諾/拒絶という反対の意味を持ち得ることは、日本語の常識の一つである。それを悪用した悪徳商法も取りざたされたくらいだ。訪問販売などで商品をすすめられて「いいです」と答えると「買ってもいいです」の意味に解釈されて強引に契約させられかねないので、はっきり「いりません」と言いましょう、と、アドバイスしている文章を何度も見たことがある。普段の仲間内の会話でも、「飲みに行く?」「...今日はいいよ」「いいんだ、じゃあ行こう」などという冗談を交わしたことも、なくはない。

でも、こういう冗談抜きの取り違えをされたことは、今までなかった。

英語ならどんな聞かれ方でも「Yes」「No」で誤解は起こらないだろうし、中国語でも、たとえば「要口袋嗎?」などと聞かれたら(そんなことを聞くのかどうか知らないが)、「要」「不要」と答えれば済むんだろう。万一、上のように「可不可以裝進口袋裡?」と面倒な質問をされたとしても、「不可以」と答えて何の問題もないはずだ。第一そんな聞き方、日本人以外はまずしないに違いない。

強い語感の言い方をできるだけ避けるという日本語的な感性が、おそらく日本人全体の態度としてもにじみ出ているはずで、一方では「控えめ」「奥ゆかしい」とはされながらも、実務的なコミュニケーションの上で障害になっていることも少なくないだろうなあ、と、改めて思った。

その他に、上のやりとりで感じたのは、イトーヨーカ堂がこうした商品を「本当は袋に入れたがっている」んじゃないか、ということだ。わからないこともない。袋に入れないとなると、商品のどこかにロゴ入りのセロテープを貼って手渡すことになる。そんなものを持って歩かれると、遠目に万引きと区別がつかない。だからあえて客が袋を断りにくい尋ね方をしているのだとしたら、少々癪にさわるけれども、仕方がないのかも知れない。

もしそうではなく、この店員が単に「ていねいさ」を増そうという意図で「客に許可を求める」形をとったのだとしたら、それはコミュニケーション上少し問題がある。

などとごちゃごちゃ考えているうちに気づいた。...そうか、「マイバッグ」を持って行けば何の問題もなかったんだ。
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by uedadaj | 2010-10-20 19:05 |


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