(台湾《2535雜誌》2010年1月号掲載--掲載文は繁体中文)
<テーマ:ファッション> 女性ファッションの「男気」 よその国ではどうなのか知らないが、女性向けファッション雑誌の見出しは、結構男らしい。 曰く「無敵」、「勝負」、「最強」、「冬の陣」などなど、少年漫画や格闘ゲームに出て来るような勇ましいコトバをいくらでも目にする。これって年齢層やファッションのジャンルとはあまり関係がない。17歳向け雑誌も「最強私服」や「モテ服冬の陣」で戦っているし、「品格ある女性」を目指す30代向けの雑誌も「コーデ11番勝負」などを繰り広げていたりする。 大昔のイデオロギー闘争を思わせる大時代な表現も多い。今をときめく女優やモデルの笑顔に重ねて「ジャケット党宣言!」、「ミーハー主義!」、「日本のいい女革命!」という見出しが踊っていたりする。今や慣れっこになって普段は余り気にしないが、考えてみれば、おしゃれを語るのに何でわざわざ、というようなボキャブラリーではある。 もちろん雑誌の見出しだから、インパクトと受けを狙ったオーバーな表現だと片付けることもできるが、幾分は、ファッションに勤しむ女子の心理を示していると考えていいはずだ。じゃあ、彼女たちは一体何と戦っているんだろう。...僕が思うに、戦う相手は男性とかライバルの女性とかではなく、この社会なんじゃないだろうか。 日本社会の暗黙のルールとして、ある程度の均質性を前提条件として、微妙な差異によって個性を主張することを求められる。外見や言動が、同じ場に属する他のメンバーとかけ離れていると居場所を失うし、かといって周りに合わせ過ぎると存在感をなくしてしまう。 男性の場合、一般的には職場という均質性の保証された舞台があり、仕事内容で個性を発揮させるというしくみが定着している。女性はかつて家庭と地域社会がその舞台だったが、そんな時代はもう終わった。かといって、人生を職場に依存する意識も確立していない(たぶん、確立させる気もさほどないだろう)。そこで選びとった手段の一つが、ファッションなんじゃないか。 あるジャンルのファッションに身を置くことで自分の居場所を確認し、その中でレベルの高いおしゃれを追求することで、存在価値を高めていく。そして、ファッションの好みが近い女性たちは互いに情報を交換し、集団としての立場を向上させていく。 そう考えてみると、僕は何となく日本の武士の起源を連想する。武士とはもともと、自分たちの手で開墾した農地を、よそ者や外部の権力に奪われないように武装したのが始まりだと、学校で習った覚えがある。彼女たちも、ファッションを武器に自分たちの存在権をかけて戦っているのだ、と考えれば、やたら好戦的だったりイデオロギー的だったりする見出しにも納得できなくもない。 そう言えば最近、ゆるさや自然さ、やさしさをキーワードにした着こなしをする「森ガール」という女性たちが注目を集めているが、ここでもきっとそのうち「無敵!森ガール革命」なんてことを言われ始めるに違いない(?)。 (中文版はこちら)
by uedadaj
| 2010-02-16 18:52
| 散歩
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