超商

芋づる式にいきます。台湾メディアの新参ボキャブラリー散歩。



先日書いた「油切=ダイエット@台湾」のことを、最近原稿を書かせてもらっている台湾の雑誌社の人に話してみたら、彼は「えー、油切って日本語じゃないの?」と大いに驚いていた。それだけでもちょっと気分が良かったわけなんだが(笑)、何と彼が現地の新聞「自由時報」に投稿して記事になってしまった。おー、ご丁寧に「住在東京的日本部落客uedada」の名前まで出していただいている。(部落客とは、台湾の中国語でブロガーのこと。ちなみにブログは部落格。大陸の中国語ではどちらも「博客」というらしい)まあ、それはそれとして。

今回の話は、この記事中に見つけた知らない単語について、である。リンクした記事の中に、こういう写真とそのキャプションがある。いつリンク切れになるかわからないので、引用しておく。


超商中琳瑯滿目的油切飲料。(記者林嘉琪攝)


ざっと日本語にすると、「超商の中にずらり勢揃いした油切ドリンク。(林嘉琪記者撮影)」ということになるわけだが...ちょっと待て。文中にさらりと使ってある「超商」という言葉、私ゃ初めて見たんですけど。

最初は「超市(スーパーマーケット)」の間違いかと思ったが、写真をよくよく見ると、棚のサイズがスーパーというよりコンビニっぽい。近頃の台湾では、コンビニのことを「超商」というのだろうか?

Twitter上で、「超商って超市とちがうの?」と台湾の人々に聞いてみると、たちどころに複数の人から「超商=コンビニで、超市=スーパーマーケット」という答えが返って来た。どうやら間違いなく、しかも相当フツウの言葉のようだ。

例によってウィキペディア中文版を見てみる。「コンビニ」に対応する見出しは大陆简体では「便利店」、台灣正體では「便利商店」だ。この微妙な違いもなかなか興味深いんだが、「台湾では超商という」などの説明は現在のところ見当たらない。

ついでにもう少しウロウロして、台湾のコンビニのことを調べてみる。台湾では1978年にセブンイレブンがコンビニを開業。かなり遅れて1988年に、ファミリーマートやam/pm、サークルKなどが続々開業したそうだ。で、現在台湾全土で営業している各コンビニの数はというと、
◯セブンイレブン      約4800軒
◯ファミリーマート     約2300軒
◯萊爾富(現地企業)    約1200軒
◯サークルK(OKとも表記) 約 900軒 

つまり、台湾においても7-11がコンビニの筆頭格と言えるようだが、その台湾セブンイレブンを経営している企業の名前が、

「統一超商股份有限公司」

...ははあ。どうやら「超商」の語源に行き着いたようだ。前後してTwitter上にも、ネット上で付き合いの長い台湾人のfred氏からコメントが入った。彼によれば、最初「超商」はセブンイレブンだけをさす言葉だったそうだ。

たとえば「セロテープ」とか「ウォークマン」「バンドエイド」などの言葉。普段僕らは一般名詞として使っているが、実はそれぞれ企業が商標として登録した固有名詞なのだそうな。つまり、ニチバン株式会社が発売しているアレでなければ「セロテープ」とは言えないし、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製でなければ「バンドエイド」ではない。(ちなみに九州では「バンドエイド」ではなく、熊本のメーカー製の「リバテープ」が普通ですXD)

ちなみにこうした「普通名詞化した商標」は意外とたくさんあって、ウィキペディアにちゃんと載っている。ほんとに面白いよねこのサイト。

ともあれ、ソレらと同じ現象によって、台湾では「超商」という言葉が定着したらしい。辞書に載るほどではないにせよ、今やニュースや新聞でも普通に使っているし、先ほど挙げたサークルK(OK)に至っては、自社のホームページに堂々と「OK超商」と表記している。一方、上記に書いた「便利商店」という言い方もまだ衰退したわけではないようだ。

なぜ「便利商店」という言葉がありながら「超商」が普及しつつあるのかについて、僕の恩師である中国語の先生からこういうご意見をいただいた。曰く:

「便利商店という言い方は台湾ではあまり"ピンと来ない"のかも知れない。だって東南アジアでは、夜中まで営業している店ってよくあるでしょ。"どこが便利なの"ということですね。そこへいくと"超商"は、何でも売ってるスゴイ店、という感じで、コンビニの本質の一つを言い当てている」

なるほど、そういう要素もあるわけですね。と納得した数日後、もう一つ理由があるかも知れない、と思いついた。

つまり、「便利商店」という言い方自体、少々長過ぎて「便利じゃない」んじゃなかろうか?字数だけで言えば日本語の「コンビニ」と同じ4文字だが、リズムの面から言えば、中国語の1文字の音は日本語の2文字分に近い。「去便利商店」より「去超商」の方が、「ちょっとコンビニへ..」の感覚に近いんじゃなかろうかと、そんな考え方もできなくはない。

さて。「超商」が片付いたところで気になって来たのが、大陸の「便利店」と台湾の「便利商店」の微妙な違いの件である。Twitterで聞いた時に「便利店は大陸の言い方よ」と教えてくれた人もいるので、たぶん相当はっきりと使い分けられていると思うんだよなあ。

この辺になると僕の力では調べようがないが、おそらく最初は中台それぞれ独自に訳して、たまたま「便利店」と「便利商店」になったんだろう。問題はその後だ。台湾側が大陸の「便利店」を見て、「あー、あっちの方がよかったなあ、短いし」と思ったが、普段大陸へ語彙を輸出しているプライドがじゃまして、今さら「便利店」には切り替えられなかった、とか?
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by uedadaj | 2009-08-06 18:47 | | Comments(9)
Commented at 2009-08-10 00:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by uedadaj at 2009-08-12 17:19
ま、なかなか更新しませんが、たまに面白がってもらえれば。^^
Commented by T.Fujimoto at 2009-08-12 23:21 x
なるほど、九州ではリバテープだと言うんですね。
確かにネットで調べても、特に熊本では絆創膏の一般用語だと思っている人が多いとか。地域性があるのはおもしろいです。
まあ、バンドエイドのほうも商品名なのですが。いまもそうなのかわかりませんが、台湾ではよく「OK繃」で呼ばれていたと思います。こちらも商品名なのですかね?
Commented by 小學生 at 2009-08-14 06:03 x
回想起來,我倒從沒用過"超商"這個字眼...

雖然我家附近最早只有7-11
但後來也有FamilyMart, OK等不同的便利店
去哪一家總是會講得很明確
Commented by uedadaj at 2009-08-18 10:08
T.Fujimotoさん:
「OK繃」、確かに台湾のサイトなんかで見たことがあります。
通販サイトで「バンドエイド」を紹介する時にも、
「OK繃」という説明があったような...
こっちも語源が気になりますね。
Commented by uedadaj at 2009-08-18 10:14
小學生,
看來"超商"一個相當新來的詞彙,那麼不能怪有很多人像你一樣不太用。
但...那麼台灣的報紙大概很喜歡用新詞彙,不像日本的報紙。
Commented by 小學生 at 2009-08-20 08:06 x
> 看來"超商"一個相當新來的詞彙
但如果以 "統一超商" 這個公司的歷史來推算
它成立於1978年,1997年股票上市
"超商" 一詞好像也稱不上新

我之所以不用 "超商" 一詞
應該是因為英文系 + 翻譯的緣故
所以直覺習慣使用與 convenient store 最接近的"便利(商)店"
^_^"
 
Commented by カワナ at 2010-07-07 03:39 x
初めまして、今日本に留学している台湾人です。

実家は台北で、活動範囲も台北ばっかりでした。

私の場合ですね、
台湾では7-11が圧倒的に多いし集中してるし商品やサービスの揃いも一番多いということで、私の周りでは、「ちょっとセブン行ってくる」と言うと、コンビにに行く意味になりますね。どのコンビでも構わないって感じって使われていますね。

超商というなら意味は通じるけど、発音は少ししにくいし、聞き手も分かりにくいかもしれません。
また、新聞などメディアとは、特定な商店の名前を載せるのを避けてる(特定の企業の宣伝になる)から、この言葉を使うようになってるじゃないかなと思います。

つまり、やや書き言葉って感じがしますね。
Commented by uedadaj at 2010-07-09 10:44
カワナさん、初めまして。
ご解説ありがとうございました。

なるほど。記事や文章で多用するけれど会話ではあまり口にしない、
という言葉は結構ありそうですが、
「超商」もそれに属する言葉なんですね。
いつか台湾へ行ったら、「コンビニはどこですか」などと聞く時には
「超商」と言わずに「セブン」ということにします。


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